美しさは、この世への未練

人は、自分の存在を肯定してくれる心の支えを探している。この世に引き止めてくれる何か、とも言える。

世の中には、無気力で苦しむ人たちがいる。無気力は、人間から生きている実感を奪う。本当のところ、無気力で生きていても問題ないし、悪いことではない。しかし、生きている実感こそが生きる支えなら、無気力が否定されるのも頷ける。無気力には友達が少ないので、私と似ている。

無条件に生を認めることができるなら、支えを求めることはなくなる。苦しむこともない。だが、現実には難しい。

心の奥底から湧き出る感情によって、生きている実感を持つことができる。たとえば、かっこいい人や美人に恋い焦がれる気持ちは、人を無意識のうちにそれへと導いてくれる。だから、人は人を好きになる。人を好きになるからイキイキするのではない。イキイキするために、人を好きになるのだ。

美しさとは、この世への未練だ。美しい景色を見て感動した時、人はその心の動きを大切にする。心動かしてくれる何かが、存在を肯定してくれる。