引用:岩波文庫 エピクテートス 人生談義(下) 鹿野治助訳
1. 自惚れを捨てる。「必要なものはもうない」などと悟ったつもりになってはいけない
自分に満足することは、良いように見えることがあります。「足るを知る」という言葉があるように、身を滅ぼすほどの欲望は自制するべきでしょう。
しかし、もし自分のことしか考えず、「これで満足だ」と他人に何もしないでいれば、あなたは迷い続けます。
あなたは今、本当に何もしなくていい状態でしょうか。
やるべきことがあるのにやらないでいることは、あなたを苦しめます。何もせずに悠々自適な生活、というと羨ましく思うかもしれません。でも人は裕福で働かなくていいからといって、幸福になるわけではありません。
張り合いのない・自分が生きている意義を感じない日々では空虚な気持ちになります。
何かをしなければならないのではありません。するべきだと感じることをしましょう。
「するべきことがないな」と思うなら、見つける工夫をしましょう。病気でもなく健康であれば、あなたにできることはたくさんあります。病気を抱えながらでも、懸命に自分の果たすべき役割を果たす人もいます。
あなたの能力・仕事で助かる人たちがいることを忘れないでください。
2. 「現状はもう良くならないのではないか」という疑いを捨てる
どんなに苦しい状況であっても、「最低最悪」なことばかりが起こるわけではありません。時にはほっとする瞬間があったり、愉快なことが起こったりします。
どれほど苦しくても、一歩引いて冷静に状況を見てください。そうすれば、大変な状況の中にあってもなお、心の「ゆとり」を持つことが可能です。
「不可能だ!」と思うことがあれば、いっそう知恵を絞り、探求してください。「人生でこんなに最低な時はない。何も明るいことがない」と感じる一方で、「いや、これは神様からの試練なんだ。今は悪い状況かもしれないけど、そのうち変わる。止まない雨はないんだ」と、落ち着くことができます。
・何かに惑わされることなく自分の意志を貫く
・避けるべき困難を避ける
大人としての成熟は、この二つを上手くこなすことにあります。
人生には困難なことが降りかかってきます。だからといって困難を100%苦しむ人生を歩まなければならないことはありません。
あなたにはあなたの意志があります。それは本来、外部の影響で消滅させてはならないものです。
困難なことと折り合いをつけながら、なるべく自分の思う通りの人生を歩めるよう努力しましょう。
あなたのこれまでの経験から「これはまずいことになりそうだ」と判断できることは、なるべく避けるべきです。あるいは、予防をしましょう。
当たり前のように思えますが、面倒なことをきちんと避けるのは重要な能力です。
たとえば、「あ、この人の話長くなりそうだな」と思っていても、その場に居続ければ長話を聞く羽目になります。何の得にもならないとわかっているなら、早々に離れるなど対処してください。
人生はただでさえ予期せぬ不幸に見舞われるものです。予想できる「やばいこと」を不必要に味わう必要はありません。頭を使ってそれを避け、あなたのやりたいことを実現してください。