創作短編。『「普通」をやめた男女』

ある日、2人の男女が一緒に歩いていた。

男は道端に、空き缶のゴミが捨てられていることに気づいた。

男は躊躇することなくそのゴミを拾い、ゴミ箱へ捨てた。

かつての男であれば、
「いい人アピールだと思われるのではないか」
「こんな汚い空き缶をデート中に拾うなんてナンセンスだ」
と思い、ゴミを拾わなかっただろう。

しかし、男はもはや「普通の人間」をやめた。
「拾って捨てるべきだ」という意志に負けることはなかった。

男がゴミを捨て終わると、女は突然男の手を握った。

その手はゴミを拾った手だ。

男「いや、あの、ごめん、さっきゴミを拾った手だし汚いよ」

女「気にしないわ」

2人はそのまま手をつなぎ、歩み始めた。